PART 20

 

     56. だがかれらの民は,(真面目に)答えず,「この町からルートの家族を追い出しなさい。 かれらは本当に純潔振る人びとです。」と言うだけであった。 

 

     57. だがわれは,かれ(ルート)の妻を除いてかれとかれの一家を救い,かの女を後に残すことにした。 

 

     58. そしてわれはかれらの上に,(石の)雨をどっと降らせた。この雨は警告された者にとり災いであった。 

 

     59. 言ってやるがいい。「アッラーに讃えあれ。かれが選ばれるしもべたちの上に平安あれ。アッラーが好ましいか,またはかれらが(かれに)配する神々か。 

 

     60. 誰が,天と地を創造したのか。また誰があなたがたのために,天から雨を降らせるのか。それでわれは,美しい果樹園をおい茂らせる。そこの樹木を成長させることは,あなたがたには出来ない。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。いや,かれらは(正しい道から)外れた民である。 

 

     61. 誰が,大地を不動の地となし,そこに川を蝕け,そこに山々を置いて安定させ,2つの海の間に隔壁を蝕けたのか。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。いや,かれらの多くは知らないのである。 

 

     62. 苦難のさいに祈る時,誰がそれに答えて災難を除き,あなたがたを地上の後継者とするのか。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。だがあなたがたは,少しも留意することがない。 

 

     63. 陸と海の情黒の中で,あなたがたを導くのは誰か,また慈悲の前兆の吉報として,風を送るのは誰か。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。アッラーはかれらが(主に)配して崇めているもの(偶像)の上にいと高くおられる。 

 

     64. 創造をなし,それからそれを繰り返し,天と地からあなたがたを扶養するのは誰か。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。言ってやるがいい。「あなたがたが真実を語っているというのなら,その証拠を出しなさい。」 

 

     65. 言ってやるがいい。「幽玄界を知るものは,天地の間でアッラーの外にはないのである。」またかれらは,何時甦らされるか感知出来ない。 

 

     66. いや,かれらの知識は来世に及ばない。いや,それに疑いを抱いている。いや,それに就いてかれらは盲目である。 

 

     67. 不信心の者は言う。「わたしたちやわたしたち祖先が,泥になってしまってから,本当に甦らされるのであろうか。 

 

     68. わたしたちもわたしたちの祖先も,以前,このことを約束された。だが本当にこれは,昔の人の物語に過ぎない。」 

 

     69. 言ってやるがいい。「地上を旅して,これら罪深い者の最後がどうであったかを見届けよ。」 

 

     70. あなたは,かれらに就いて悲嘆しなくてもよい。またかれらの策謀に心を痛めなくてもよい。 

 

     71. かれらは言うのである。「あなたがたが真実を言うのなら,この(威嚇の)約束(が来るの)は何時ですか。」 

 

     72. 言ってやるがいい。「あなたがたの急いでいることの幾つかは,あなたがたに迫っているかも知れない。」 

 

     73. 本当にあなたの主は,人間に対し恩恵を施す御方である。だが,かれらの多くは感謝もしていない。 

 

     74. 本当にあなたの主は,かれらが胸に隠すことも現わすことも知っておられる。 

 

     75. 天と地の隠されたことは,等しく明瞭に書冊の中に(記されて)ある。 

 

     76. 本当にこのクルアーンは,イスラエルの子孫に,かれらが議論している最も大きな問題について語るものである。 

 

     77. 本当にそれは,信仰する者たちに対する導きであり慈悲である。 

 

     78. 本当にあなたの主は,御自分の叡智をもってかれらの間を裁定されるであろう。かれは,偉力ならびなく全知であられる。 

 

     79. そこであなたは(凡て)アッラーに御任せしなさい。本当にあなたは,明白な真理の(道の)上にいるのである。 

 

     80. 本当にあなたは,死者に聞かせることは出来ない。また聞えぬ者に呼び掛けても聞かせることは出来ない。(ことに)かれらが背を向けて引き取る時は。 

 

     81. またあなたは見えない者を,迷いから導くことは出来ない。あなたはただ,わが印を信じる者たちに聞かせられるだけである。そうすればかれらは服従,帰依するであろう。 

 

     82. かれらに対し御言葉が実現される時,われは大地から一獣を現わし,人間たちがわが印を信じなかったことを告げさせよう。 

 

     83. その日われは,それぞれの民族から,わが印を虚偽であるとした一群を集め,隊列に並べよう。 

 

     84. (審判の席)まで,かれらが来た時仰せられよう。「あなたがたは,(自分の)知識では,わが印を理解出来なかったのに,それらを嘘であるとして信じなかったではないか。(そうでなかったら)あなたがたは一体何をしていたのか。」 

 

     85. そして御言葉が,かれらに対し下されると,その自ら行った悪行のためにかれらは(一言も)言えないであろう。 

 

     86. かれらは気が付かないのか。われはかれらの憩いのために夜を蝕け,またものが見えるように昼を定めたではないか。本当にこの中には,信じる人びとへの印がある。 

 

     87. ラッパの吹かれる日(をかれらに警告しなさい)。アッラーが御好・の者の外は,天にあり地にある凡てのものは恐れ戦き,皆身を低くしてかれ(の御前)に罷り出よう。 

 

     88. あなたは山々を見て堅固であると思うだろう。だがそれは雲が散るように通り過ぎていくのである。それは凡てのものを,完成なされるアッラーの御業である。本当にかれはあなたがたの行うことを熟知なされる。 

 

     89. 善事を携えて来る者には,それよりも善いものを与えられ,その日,恐れから安全になろう。 

 

     90. 悪事を携えて来る者は,顔から先に火獄に投げ込まれよう。さてもあなたがたは自分の行ったこと以外のことで,報われようか。(そんなことはない。) 

 

     91. わたしは,聖域となされたこの町(マッカ)の主にだけ仕えなさいと命じられた。凡ての有はかれに属する。わたしは,服従,帰依する者の一人であるよう命じられ, 

 

     92. またクルアーンを読誦するよう (命じられた)。それで導きを受ける者は,自分自身のために導かれるのである。そして迷う者には,「わたしは警告者の1人に過ぎない」と言ってやるがいい。 

 

     93. また言ってやるがいい。「アッラーを讃えよ。かれは間もなく数々の印を示される。そしてあなたがたも,それを知ることになろう。主はあなたがたの行うことを,疎かになされない。」

 

28 - 物語章〔アル・カサス〕

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. ター・スィーン・ミーム。 

 

     2. これらは,明白な天啓の書の御印である。 

 

     3. われは信仰する者のために,ムーサーとフィルアウンの物語の1部をありのままあなたに読誦しよう。 

 

     4. 本当にフィルアウンは,この国において専横を極め,その民を諸党派に分け,かれらの中の一派を押さえて男児を殺し,女児は生かして置いた。本当にかれは非道であった。 

 

     5. われは,この国で虐げられている者たちに情けを懸度いと思い,かれらを(信仰の)指導者となし,(この国の)後継ぎにしようとした。 

 

     6. そしてこの国にかれらの地歩を確立させて,フィルアウンとハーマーンの軍勢に,かれらが警戒していたことを目の当たりに示そうとした。 

 

     7. そこでわれは,ムーサーの母に啓示して言った。「かれに乳を飲ませなさい。かれの(身の)上に危険を感じた時は,かれを川に投げ込・,恐れたり悲しんではならない。われは必ずかれをあなたに返し,使徒の一人とするであろう。」 

 

     8. フィルアウンの家族は,(他日)かれらの敵になり,悲し・の種となるかれを拾い挙げた。本当にフィルアウンとハーマンそしてその軍勢は,罪深い者たちであった。 

 

     9. フィルアウンの妻は言った。(これは)わたしとあなたの目の喜びです。かれを殺してはいけません。わたしたちの役に立つこともありましょう。また養子にしてもよい。」かれらは(その行っていることの意味に)気付かなかった。 

 

     10. ムーサーの母の心は空になった。もしわれが,その心を(信仰で)強くしなかったならば,かの女は危くそのことを,打ち明けてしまうところであった。やっとかの女は,信者の一人として留まった。 

 

     11. そしてかの女は(ムーサーの)姉に,「かれ(の後)を付けなさい。」と言った。それでかの女は,遠くからかれを見守っていたので,かれらは何も気付かなかった。 

 

     12. われは前もってかれ(ムーサー)に乳母(の乳)を禁じて置いた。それでかの女(ムーサーの姉)は言った。「あなたがたに,かれを育てる家族をお知らせしましょうか。かれに懇に付き添う者たちであります。」 

 

     13. こうしてわれは,かれをその母に返してやった。かの女の目は生気を取り戻し悲し・も消え失せた。かの女はアッラーの約束が,真実であることを納得した。だがかれらの多くは(このことが)分らなかった。 

 

     14. かれが成年に達し立派な者になった時,われは英知と知識を授けた。このようにわれは,善行をなす者に報いる。 

 

     15. (ある時)かれは,人が注意していない隙に町に入り,2人の者がそこで相争っているのを見かけた。その1人はかれの一派の者で,外は敵方の者であった。かれの一派の者が,敵方の者に対し,かれに加勢を求めた。そこでムーサーはかれを挙で打って,息の根を正めてしまった。かれは言った。「これは悪魔の仕業である。本当にかれは,人を惑わす公然の敵である。」 

 

     16. かれは(祈って)言った。「主よ,本当にわたしは自ら不義を犯しました。どうかわたしを御赦し下さい。」それで(アッラーは)かれを赦された。本当にかれは覚容にして慈悲深くあられる。 

 

     17. かれは申し上げた。「主よ,あなたはわたしに恩恵を与えて下さいました。だからわたしは,もう決して罪を犯す者たちの味方にはなりません。」 

 

     18. 翌朝かれは,町で,あたりを警戒し,恐れを抱きながら町を見回すと,見るがいい。前日かれに援助を求めた者が,かれに助けを請うて叫んだ。ムーサーはかれに言った。「あなたはよくよく間違いをしでかす男だ」。 

 

     19. それでかれが,自分たちの敵である者に暴力を振おうと決心した時,相手は言った。「ムーサーよ,あなたは昨日人を殺したように,わたしをも殺そうとするのですか。あなたは地上において,調和を計ることを望まない暴君になりたいのでしょう。」 

 

     20. その時一人の者が町の一番はずれから走って来て言った。「ムーサーよ。長老たちがあなたを殺そうと相談している。だから(すぐ)立ち去りなさい。わたしはあなたの誠実な忠告者です。」 

 

     21. それでかれは,恐れながら(あたりを)見回し,そこから逃げ出し,(祈って)「不義の民からわたしを御救い下さい。」と言った。 

 

     22. かれは顔をマドヤンの方に向けて,「主は,わたしを平和な正しい道に御導き下さるかもしれません。」と言った。 

 

     23. それからマドヤンの水場に来て・ると,かれは一群の人びとが(その家畜に)水をやっているのを見た。また,かれらの片隅に,2人の婦人が(懸命に家畜を水場に近よらせまいとして)後方に控えているのを見かけた。かれは言った。「お2人はどうかなされたのですか。」2人は言った。「わたしたちはその牧夫たちが帰るまで,水をやることが出来ません。わたしたちの父は,大変年老いています。」 

 

     24. そこでかれは2人のために(家畜の群に)水をやり,それから木陰に退いて(祈って)言った。「主よ,あなたがわたしに御授けになる,何か善いものが欲しいのです。」 

 

     25. 2人の女の中の1人が,恥ずかしげにかれのところにやって来て言った。「わたしたちのために水をやって下さったので,父があなたを御招きして,御礼したいそうです。」そこでかれ(ムーサー)はかれのところにやって来て,身の上話をした。かれ(父親)は言った。「心配なさるな。あなたは不義の民から逃れたのです。」 

 

     26. 2人の女の1人が言った。「かれを御雇いなさいませ。あなたのために雇って一番善いのは,強健で誠実(な人物)です。」 

 

     27. かれ(父親)は言った。「あなたが,もし8年間わたしのために働いてくれれば,わたしは2人の娘の中の1人を,あなたに妻せたい。もし10年を費やしたいならば,それもあなたの御自由に任せよう。わたしはあなたに,無理強いするつもりはない。アッラーが御好・なら,わたしが正しい人間であることが,あなたにも分るでしょう。」 

 

     28. かれ(ムーサー)は言った。「それはわたしとあなたの間(の約束)であります。2つの期限のどちらを満期としても,わたしを責めないで下さい。アッラーが,わたしたちの言ったことの,証人であられます。」 

 

     29. それからムーサーが年期を満了し,家族と一緒に旅している時トール山の傍に,一点の火を認めた。かれは家族に言った。「あなたがたは待っていなさい。わたしは火を認めた。あそこからあなたがたに消息を持って来よう。または火把を持ち返って,あなたがたを暖めよう。」 

 

     30. そこにやってくると,谷間の右側の,祝福された地にある一本の木から声がした。「おおムーサーよ,本当にわれは万有の主,アッラーであるぞ。 

 

     31. さ,あなたの杖を投げなさい。」するとかれはそれが蛇のように動くのを見て,踵を返して逃げ出し,後ろも振り向かなかった。(その時また声がした)。「ムーサーよ,近寄れ。そして恐れるな。本当にあなたは,堅く守護されている者である。 

 

     32. あなたの手を懐に入れなさい。何の触りもないのにそれは白くなろう。恐の念があるならば,腕を(両脇に)締め付け(れば落付くだろう)。これらは,あなたの主からの,フィルアウンとその長老たちに対する2つの証明である。本当にかれらは,主の掟に背く者である。」 

 

     33. かれは申し上げた。「主よ,わたしはかれらの1人を殺しました。それでかれらがわたしを殺すのを恐れます。 

 

     34. しかしわたしの兄のハールーンはわたしよりも雄弁です。それでわたしの言葉が信じられる援助者として,かれをわたしと一諸に遺わして下さい。わたしは,かれらに虚言の徒とされることを恐れます。」 

 

     35. かれは仰せられた。「われはあなたの兄を,あなたの片腕とし,またあなたがた両人に権威を授けよう。そうすればわが印によってかれらはあなたがたに危害を与えられないであろう。あなたがた両人とあなたがたに従う者は,必ず勝利者となる。」 

 

     36. ムーサーがわれの明白な印をもって,かれらの許に来ると,かれらは言った。「これは作り上げた魔術に過ぎません。わたしたちは,昔の祖先の間でも,こんなことは聞きませんでした。」 

 

     37. ムーサーは言った。「わたしの主は,誰がかれの御許から来たのか,また誰が(来世の)住まいを得るか,を熟知される。悪を行う者は決して成功しません。」 

 

     38. フィルアウンは言った。「長老たちよ。わたし以外に,あなたがたに神がある筈がない。そしてハーマーンよ,泥(を焼いた煉瓦)でわたしのために高殿を築け。そしてムーサーの神の許に登って行こう。わたしには,どうもかれは虚言の徒であると思われる。」 

 

     39. かれとかれの軍勢は,地上において正義を無視し,高慢であった。そして自分たちは決してわれに帰されないのだと,考えていた。 

 

     40. それでわれは,かれとかれの軍勢を捕え,海に投げ込んだ。見るがいい。悪を行う者の最後がどんなものであったかを。 

 

     41. われは,かれらを(人びとを)火獄に誘う先導者とした。復活の日には,かれらは助けられることはない。 

 

     42. 現世において,われはかれらに呪いを付き纒わせた。復活の日においても,かれらは嫌われるであろう。 

 

     43. 本当にわれは,昔の幾世代を滅ぼした後,人びとの開眼のために,また導きと慈悲のために,ムーサーに啓典を授けた。必ずかれらは訓戒を受け入れるであろう。 

 

     44. われがムーサーに命令を下した時,あなたは(シナイ山の)西側におらず,また(その)証人でもなかった。 

 

     45. だが,われは(その後)幾世代を過ごさせ,かれらの生命を永らえさせた。あなたはまた,マドヤンの民の間に住んで,かれらにわれの印の読誦もしたわけではなかった。だがわれは(啓示を授け)使徒たちを遣わしたのである。 

 

     46. またわれが(ムーサーに)呼び掛けた時,あなたはシナイ(山)の傍らにいたわけではなかった。だがあなたの主からの慈悲として(クルアーンが授けられ),あなた以前に1人の警告者ももたなかった(マッカの)民に警告するため(あなたは遣わされたの)である。必ずかれらは,訓戒を受け入れるであろう。 

 

     47. もしそうしなかったならば,かれらの手が先になした(行いの)ため,かれらには災厄が襲いかかるであろう。その時になって,かれらは言うであろう。「主よ,何故あなたは,使徒をわたしたちに御遣わしにならなかったのか。わたしたちはあなたの印に従い,信心深い者になったものを。」 

 

     48. だが(今)わが手許から,真理がかれらに届けられると,言う。「ムーサーに与えられたものと同じようなものが,どうしてかれに与えられないのであろうか。」かれらは以前にも,ムーサーに与えられたものを信じなかったではないか。かれらは,「2つとも魔術である。栗いに助けあうものである。」と言った。「わたしたちは(どちらも)信じない。」と言ったりした。 

 

     49. 言ってやるがいい。「それなら,この2つよりも優れた導きとなる啓典を,アッラーの御許から持って来い。あなたがたが真実なら,わたしはそれに従おう。」 

 

     50. それでかれらがもしあなたがたに答えられないなら,かれらは只,自分の(低い)欲望に従っているに過ぎないことを知れ。アッラーからの導きがなく,自分の欲望に従う者以上に道に迷う者があろうか。本当にアッラーは悪を行う民を御導きになられない。 

 

     51. 今われはかれら(マッカの民)にも言葉を届けた。必ずかれらは訓戒を受け入れるであろう。 

 

     52. われがこれ以前に啓典を授けた者たちはよく信仰している。 

 

     53. それがかれらに読誦されると,かれらは言う。「本当にこれは主から下された真理です。わたしたちはこれを信じます。わたしたちはこの(下る)以前からムスリムであったのです。」 

 

     54. これらの者は2倍の報奨を与えられよう。かれらは(よく) 耐え忍び,善をもって悪を退け,われが与えたものを施すために。 

 

     55. また,つまらない談話を耳にする時かれらは身を引いて言う。「わたしたちには,わたしたちの行いがあり,あなたがたにはあなたがたの行いがある。あなたがたの上に平安あれ。わたしたちは真理を拒む者を相手にしない。 

 

     56. 本当にあなたは,自分の好む者(の凡て)を導くことは出来ない。だがアッラーは御心のままに導き下される。かれは導かれた者を熟知なされる。 

 

     57. かれらは言う。「わたしたちが,もしあなたと一緒になって導きに従うならば,わたしたちはこの土地から追われることになろう。」われは,かれらのために安全な聖域を蝕け,われからの糧として凡ての果実をそこに集めたではないか。だがかれらの多くはそれが分らない。 

 

     58. われは如何に多くの(安楽で裕福な)生活に有頂天になった町を,滅ぼしたことであろうか。それ以来,かれらの居所には,(至極)僅かな人びとを除き住む者もない。(結局)われが,それらの相続者である。 

 

     59. だがあなたの主はその(国の)首都に使徒を遣わし,かれらにわが印を読誦してからでなければ1つの町をも滅ぼしたことがなかった。またその民が悪を行わない限り,町や村を滅ぼさなかった。 

 

     60. あなたがたに与えられたものは,現世の生活のための便益と,その飾りに過ぎない。だがアッラーの御許にあるものこそ,最善で永遠に残るものである。あなたがたは悟らないのか。 

 

     61. われが良い約束を約し,それが果される者と,現世の生活の快楽を享受し,それから復活の日に(懲罰ののために)連れ出されるような者と,同じであろうか。 

 

     62. その日(主は)かれらに呼びかけて,仰せられる。「あなたがたが言い張っていた,わが仲間たち(の神々)は何処にいるのか。」 

 

     63. 判決が言い渡される者たち(不信心者)は言う。「主よ,これらは,わたしたちが迷わせた者(外の不信心者)です。かれらを迷わせましたが自分たちも迷っていたのです。だがわたしたちは,あなたに対して潔白です。かれらが拝したのは,決してわたしたちではありません。」 

 

     64. すると言われよう。「あなたがたの仲間に祈るがよい。」それでかれらはそれらに祈るのだが,それらは答えない。かれらは懲罰を見るであろう。もしかれらが導かれていたならば(よかったものを)。 

 

     65. その日,かれはかれらに呼び掛けて仰せられる。「あなたがたは,使徒に何と答えたのか。」 

 

     66. その日,(凡ての)消息はかれらに分らなくなり栗いに尋ねあうことも出来ない。 

 

     67. だが悔悟して信仰し,善行に動しんだ者は,成功者の中に入ることになろう。 

 

     68. あなたの主は,御望・のものを創られまた選ばれる。(だが)かれらは選ぶことは出来ないのである。アッラーに讃えあれ。かれは,かれらが(主に)配するもの(偶像神たち)の上に高くおられる。 

 

     69. またあなたの主は,かれらの胸に隠すことも,現わすことをも知っておられる。 

 

     70. かれこそはアッラー,かれの外に神はない。現世と来世における讃美はかれにこそ属し,かれに(現世と来世における)命令は属し,またかれにあなたがたは帰されるのである。 

 

     71. 言ってやるがいい。「あなたがたは考えられるのか。アッラーが復活の日まで夜を続けられたとすれば,あなたがたに光を与えられるものは,アッラーの外にどんな神があるのか。あなたがたは,なお聞かないのか。」 

 

     72. 言ってやるがいい。「あなたがたは考えられるのか。アッラーが復活の日まで昼を続けられたとすれば,休息する夜をあなたがたに与えられるものは,アッラーの外にどんな神があるのか。あなたがたはなお分らないのか。」 

 

     73. かれは慈悲のこころから,夜と昼をあなたがたのために定められ,それであなたがたは休・,またかれの恩典を求めることが出来る。必ずあなたがたは感謝するであろう。 

 

     74. その日,かれはかれらに呼び掛けて仰せられよう。「あなたがたが言い張っていた。かれの同輩(の神々)は何処にいるのか。」 

 

     75. われは凡ての民からそれぞれ証人を挙げて言う。「あなたがたの証拠を持ち出せ。」その時かれらは,真理はアッラー(御一人)のものであることを知り,またかれらが捏造していたものたちは消え去るであろう。 

 

     76. さてカールーンは,ムーサーの民の一人であったが,かれらに対し横柄な態度をとるようになった。われは(夥しい)財宝をかれに与えたが,その(宝庫の)鍵は,数人の力の強い男たちにとっても重かった。皆の者は,かれに言った。「有頂天になってはなりません。本当にアッラーは思い上がっている者を御好・になられません。 

 

     77. アッラーがあなたに与えられたもので,来世の住まいを請い求め,この世におけるあなたの(務むべき)部分を忘れてはなりません。そしてアッラーがあなたに善いものを与えられているように,あなたも善行をなし,地上において悪事に励んではなりません。本当にアッラーは悪事を行う者を御好・になりません。」 

 

     78. かれは言った。「これを授かったのも,わたしが持っている知識(能力)のためである。」アッラーがかれ以前に,いく世代を滅ぼしたかを,知らなかったのか。かれらは力の点でかれよりも強く,蓄えも巨額であった。凡そ罪を犯した者は,その罪に就いて(直ぐには)尋ねられないのである。 

 

     79. そこでかれ(カールーン)は,煌びやかに身を飾って人びとの中に出て行った。現世の生活を冀っている者たちは言った。「ああ,わたしたちもカールーンに与えられたようなものが戴けたならばなあ。本当にかれは,素晴しい幸運の持主です。」 

 

     80. だが(真の)知識を授けられていた者たちは言った。「情けないことを言うな。信仰して善い行いに励む者にとっては,アッラーの報奨こそ最も優れています。だがよく耐え忍ぶ者だけが,それを戴くだろう。」 

 

     81. それからわれは,かれとその屋敷を地の中に埋めてしまった。かれには,アッラーの外に助け手もなく,また自分を守ることも出来なかった。 

 

     82. 前日(まで)かれの立場を羨んでいた者たちは,言い始めた。「ああ,本当にアッラーは,御望・のしもべたちに,多くも,また少くも,恵まれる(ことが分った)。アッラーの深い御恵・がなかったならば,わたしたちもきっと(地の中に)埋まっていたであろう。ああ,不信心の者たちは,決して成功しないことが分りました。」 

 

     83. 来世の住まいとはこのようなもの。われは地上において威張りたがったり,悪を行わない者にこれを授ける。善果は,主を畏れる者にある。 

 

     84. 善行をなす者には,それに優るものを与え,悪行をなす者には,かれらの悪行に応じて報いる。 

 

     85. 本当に,クルアーンをあなたに授けられるかれは,必ずあなたを帰る所(マッカ)に帰されるであろう。言ってやるがいい。「わたしの主は,導きを(西?)す者が誰か,また明らかに迷っている者が誰であるかを,最もよく知っておられる。」 

 

     86. 啓典があなたに届けられることは,あなたの予期しなかったところで,偏にあなたの主からの慈悲である。だから決して不信心者を支持してはならない。 

 

     87. アッラーの印があなた(ムハンマド)に下された後,かれら(背信者)があなたをそれ(アッラーの印)から遠ざけるようなことがあってはならない。(人びとを) あなたの主に招け。決して多神教徒の仲間になってはならない。 

 

     88. またアッラーと一緒に,外のどんな神にも祈ってはならない。かれの外には,神はないのである。かれの御顔の外凡てのものは消滅する。裁決はかれに属し,あなたがたは(凡て)かれの御許に帰されるのである。

 

29 - 蜘蛛章〔アル・アンカブー

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. アリフ・ラーム・ミーム。 

 

     2. 人びとは,「わたしたちは信じます。」と言いさえすれば,試・られることはなく,放って置かれると考えるのか。 

 

     3. 本当にわれは,かれら以前の者も試・ている。アッラーは,誠実な者を必ず知り,また虚言の徒をも必ず知っておられる。 

 

     4. 悪を行う者は,われを出し抜くことが出来ると考えているのか。かれらの判断こそ,災いのもとである。 

 

     5. アッラーに会うことを切望する者よ,アッラーの(定められる)期限は確かに来る。かれは全聴にして全知であられる。 

 

     6. 信仰のために奮闘努力する者は,自分自身のために奮闘努力しているのである。アッラーは,すべてのものに,何一つ求めない。 

 

     7. われは信仰して,善行に動しむ者には,いろいろの罪を取り消し,その行った最善のことに,必ず報いるであろう。 

 

     8. われは人間に,両親に対して規切にするよう命じた。だがもしかれら(両親)が,あなたに対し何だか分らないものをわれに配するように強いるならば,かれらに従ってはならない。あなたがたは(皆)われの許に帰る。その時われは,あなたがたの行ったことを告げるであろう。 

 

     9. われは信仰して,善行に勤しむ者を,必ず正義の人びとの中に入らせるであろう。 

 

     10. 人びとの中には,「わたしたちは,アッラーを信仰します。」と言うが,一度アッラー(の道のため)に苦難に会うと,人間の迫害をまるでアッラーの懲罰であるかのように考える者がある。またもしあなたの主からの助け(と勝利)が(声?)されると,かれらは必ず,「本当にわたしたちは,あなたがたと一緒でした。」などと言う。万人の胸の中に抱くことを最もよく知る御方は,アッラーではないか。 

 

     11. アッラーは,信仰する者たちも,偽信者たちをも必ず知っておられる。 

 

     12. 不信心の者は,信仰する者に向かって,「わたしたちの道に従いなさい。わたしたちがあなたがたの罪を必ず負ってやりましょう。」と言う。だがかれらは,少しもあなたがたの罪を,負いはしない。本当にかれらは虚言の徒である。 

 

     13. だがかれらは自分の重荷を負い,そのうえ(外の)重荷をも負うであろう。復活の日には,かれらの虚構していたことに就いて必ず問いただされるであろう。 

 

     14. 且つてわれはヌーフを,その民に遣わした。かれはその間に留まること,千年に欠ける50年。人びとは悪を行っている間に,洪水に襲われた。 

 

     15. その時われは,かれと方舟の仲間とを救い,それを万有のための訓戒とした。 

 

     16. そしてイブラーヒームがその民にこう言った時を思え。「アッラーに仕え,かれを畏れなさい。それがあなたがたのために最も良い。もしあなたがたが理解するならば。 

 

     17. あなたがたは,アッラーを差し置いて偶像を拝し,虚偽を捏造しているに過ぎない。あなたがたがアッラーを差し置いて拝するものたちは,あなたがたに御恵・を与える力はない。だから,アッラーから糧を求め,かれに仕え,感謝しなさい。あなたがたはかれの御許に帰されるのである。 

 

     18. あなたがたが嘘付き呼ばわりしても(よい)。だがあなたがた以前の諸民族も嘘付き呼ばわりしたものである。使徒は,只公明に伝えるだけである。」 

 

     19. かれらはアッラーが,如何に創造をなされ,それからそれを繰り返されるかを知らないのか。それはアッラーには,本当に容易なことである。 

 

     20. 言ってやるがいい。「地上を旅して観察せよ。かれが如何に,最初の創造をなされたかを。やがてアッラーは,最後の(甦りの)創造をなされる。本当にアッラーは凡てのことに全能であられる。」 

 

     21. かれは御望・の者を罰し,御望・の者に慈悲を垂れられる。あなたがたはかれの御許に返されるのである。 

 

     22. あなたがたは天においても地にあっても,かれ(の計画)を,頓挫させることは出来ない。またアッラーの外に,あなたの守護者も援助者もないのである。 

 

     23. アッラーの印を信じないでまた,かれとの会見を信じない者にはわれの慈悲に与かる望・はなく,痛ましい懲罰があるだけである。 

 

     24. かれ(イブラーヒーム)の民の返答は,只「かれを殺しなさい。焼いてしまいなさい。」と言うだけであった。だがアッラーは,火からかれを御救いなされた。本当にこの中には,信仰する人びとへの印がある。 

 

     25. またかれは言った。「あなたがたは,現世の生活において,お栗いの慈し・としてアッラーを差し置いて偶像を崇めている。だが復活の日には,あなたがたは栗いに(関係を)否認し合い,栗いに呪い合うであろう。住まいといえば火獄であり,あなたがたには,どんな救助者もないのである。」 

 

     26. ルートはかれ(イブラーヒーム)を信じた。かれは言った。「わたしは主(の御許)に移り住もう。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。」 

 

     27. またわれは,かれにイスハークとヤアコーブ(のような子孫)を授け,その子孫の間に,預言の天分と啓典を授け,現世の報奨をも与えた。来世においてもかれは必ず正義の徒の仲間になろう。 

 

     28. またルート(を遣わし),かれの民に,こう言った時を思え。「あなたがたは醜行をしている。あなたがた以前に,どんな世代でもしなかったことを。 

 

     29. 本当にあなたがたは,男性に近付き,また公道で強盗を働く。またあなたがたの集りで,忌まわしい事をしている。」だがかれの民は(答えて),只「あなたが真実を言うのなら,わたしたちにアッラーの懲罰を(?)して・なさい。」と言うだけである。 

 

     30. かれは(祈って)言った。「主よ,不義を行う民からわたしを御助け下さい。」 

 

     31. わが使徒(天使)たちが,吉報を持ってイブラーヒームの許に来た時,かれらは言った。「わたしたちは,この町の人びとを滅ぼそうとするところである。本当にここの住民は,悪を行う者たちばかりである。」 

 

     32. かれ(イブラーヒーム)は言った。「だがルートがそこにいる。」かれらは言った。「わたしたちは,誰がそこにいるかを熟知している。落伍者であるかれ(ルート)の妻の外は,かれもその家族をも必ず救うであろう。」 

 

     33. わが使徒たち(天使)がルートのところに来た時,かれは自分の無力さを感じ,人びとのため悲しんだ。かれら(天使)は言った。「心配してはなりません。悲しんではなりません。本当にわたしたちは,あなたの妻の外は,あなたとあなたの家族をも救います。かの女は落伍者です。 

 

     34. わたしたちは,この町の人びとが邪悪無法なため,かれらに天から懲罰を下そうとするところです。」 

 

     35. 本当にわれはそれによって,理解ある民への明白な印を残したのである。 

 

     36. またわれは,マドヤン(の民)にその同胞のシュアイブを遺わした。かれは言った。「わたしの人びとよ,アッラーに仕え,最後の日を待ち望・なさい。悪を行って,地上を退廃させてはならない。」 

 

     37. だがかれらはかれを嘘付き呼ばわりした。それで大地震がかれらを襲い,翌朝かれらは家の中に平伏していた。 

 

     38. またアードとサムードに就いては,(廃墟と化した)かれらの住まいによって,既にあなたがたに明瞭である。悪魔はかれらに,自分の所行を立派であると思わせ,立派な見識を与えられていたのに,正道から離反させる結末となった。 

 

     39. またカールーンとフィルアウンとハーマーンのことであるが,ムーサーが明証をかれに(西?)したが,それでもかれらは,地上において高慢であった。だがかれらは(われを)淡ぐことは出来なかった。 

 

     40. それでわれは,かれらをそれぞれの罪に照らして懲じめた。ある者には砂石の暴風を送り,またある者には一声(懲罰)で襲いかかり,またある者は大地に沈め,またある者を溺れさせた。これはアッラーがかれらを損なったのではない。かれらが,自分を損なったのである。 

 

     41. アッラーを差し置いて外の主人を取る者を譬えれば,(自分で自分の)家を造る蜘蛛のようなものである。本当に家の中でも最も弱いのは,蜘蛛の家である。かれらに分っていたならば,よかったのに。 

 

     42. 本当にアッラーは,かれを差し置いてかれらが祈る,凡てのことを知っておられる。かれは偉力ならびなく英明であられる。 

 

     43. これらは,われが人間のために提示する譬えである。だが知識ある者の外は,これを理解しない。 

 

     44. アッラーは諸天と大地を真理によって創造なされた。本当にその中には信仰する者への印がある。 

 

     45. あなたに啓示された啓典を読誦し,礼拝の務めを守れ。本当に礼拝は,(人を)醜行と悪事から遠ざける。なお最も大事なことは,アッラーを唱念〔ズィクル〕することである。アッラーはあなたがたの行うことを知っておられる。