PART 16

 

     75. かれは答えて言った。「あなたは,わたしと一緒には耐えられないと,告げなかったか。」 

 

     76. かれ(ムーサー)は言った。「今後わたしが,何かに就いてあなたに尋ねたならば,わたしを道連れにしないで下さい。(既に)あなたはわたしからの御許しの願いを,(凡て)御受け入れ下さいました。」 

 

     77. それから2人は旅を続けて,或る町の住民の所まで来た。そこの村人に食物を求めたが,かれらは2人を歓待することを拒否した。その時2人は,正に倒れんばかりの壁を見付けて,かれはそれを直してやった。かれ(ムーサー)は言った。「もし望んだならば,それに対してきっと報酬がとれたでしょう」 

 

     78. かれは言った。「これでわたしとあなたは御別れである。さて,あなたがよく耐えられなかったことに就いて説明して・よう。」 

 

     79. 「舟に就いていうと,それは海で働く或る貧乏人たちの所有であった。わたしがそれを役立たないようにしようとしたのは,かれらの背後に一人の王がいて,凡ての舟を強奪するためであった。 

 

     80. 男の子に就いていえば,かれの両親は信者であったが,わたしたちは,かれの反抗と不信心が,両親に悠を及ぼすことを恐れたのである。 

 

     81. それでわたしたちは,主がかれよりも優れた性質の,純潔でもっと孝行な(息子)を,かれら両人のために授けるよう願ったのである。 

 

     82. あの壁は町の2人の幼ない孤児のもので,その下には,かれらに帰属する財宝が埋めてあり,父親は正しい人物であった。それで主は,かれらが成年に達してから,その財宝をかれら両人のために掘り出すことを望まれた。(これは)主からの御恵・である。わたしが勝手に行ったことではなかったのだ。これがあなたの耐えられなかったことの説明である。」 

 

     83. かれらは,ズ・ル・カルナインに就いてあなたに問うであろう。言つてやるがいい。「わたしはかれに就いて,あなたがたにある物語をしよう。」 

 

     84. 本当にわれは,地上にかれ(の権勢)を打ち建て,また凡ての事を,成就する基になるものを授けた。 

 

     85. それでかれは,一つの道を辿った。 

 

     86. かれが太陽の沈む(国)に来ると,それが泥の泉に没するのを認め,その近くに一種族を見付けた。われは(霊感を通して)言った。「ズ・ル・カルナインよ,かれらを懲しめてもよい。また親切にかれらを待遇してもよい。」 

 

     87. かれは言った。「誰でも不義を行う者には,わたしたちは刑罰を加える。それからかれを主に帰らせ,かれは,厳刑をもってかれ(犯罪者)を懲罰されるであろう。 

 

     88. また誰でも信仰して,善行に動しむ者には,良い報奨があろう。またわたしたちは,安易なことを命じるであろう。」 

 

     89. それからかれは,(外の)一つの道を辿った。 

 

     90. かれが太陽の登る(国)に来た時,それが一種族の上に登り,われがそれ(太陽)に対し,かれらのために覆いを蝕けないのを認めた。 

 

     91. そのようにし(てそっと置い)た。われはかれが持つものを知り尽くしている。 

 

     92. それからかれは(更に外の)一つの道を辿った。 

 

     93. かれが2つの山の間に来た時,かれはその麓に凡んど言葉を解しない一種族を見付けた。 

 

     94. かれらは言った。「ズ・ル・カルナインよ,ヤァジュジュとマァジュージュが,この国で悪を働いています。それでわたしたちは税を納めますから,防壁を築いて下さいませんか。」 

 

     95. かれは(答えて)言った。「主がわたしに授けられた(力)は,(この種族よりも)優れている。それであなたがたが,力技で助けてくれるならば,わたしはあなたがたとかれらとの間に防壁を築こう。 

 

     96. 鉄の塊りをわたしの所に持って来なさい。」やがて2つの山の間の空地が満たされた時,かれは言った。「吹け。それが火になるまで。」(また)かれは言った。「溶けた銅を持って来てその上に注げ。」 

 

     97. それでかれら(外敵)は,それに登ることも出来ず,またそれに穴を掘ることも出来なかった。 

 

     98. かれは言った。「これは,わたしの主からの御慈悲である。しかし主の約束がやって来る時,かれはそれを粉々にされよう。わたしの主の御約束は真実である。」 

 

     99. その日われは,人を御栗いに押し寄せる波のようにまかせよう。その時ラッパが吹かれ,それでわれは凡ての者を一斉に集める。 

 

     100. その日われは,不信者たちに地獄を現わし,日の辺に見せる。 

 

     101. 日に覆がされていた者は,われを念じることから(遠ざかり),聞くことも出来ないでいた。 

 

     102. 信じない者たちは,われを差し置いてわれのしもベを保護者とすることが出来ると考えるのか。本当にわれは,不信者を歓待するために,地獄を準備している。 

 

     103. 言ってやるがいい。「誰が行いにおいて最大の失敗者であるか,告げようか。 

 

     104. つまり自分では善いことをしていると,かれらは考えているが,現世の生活においての努力が,凡て間違った道に行ってしまうような者たちである。 

 

     105. これらの者は,主の印,また主との会見を信じない者たちで,かれらの行いは無駄になり,われは審判の日にかれらにどんな目方も与えないであろう。 

 

     106. それがかれらにとって当然の報いの地獄である。かれらは信仰を拒否し,われの印や使徒たちを嘲笑したからである。 

 

     107. 本当に信仰して善行に励む者に対する歓待は,天国の楽園である。 

 

     108. かれらはそこに永遠に住もう。かれらはそこから移ることを望まない。」 

 

     109. 言ってやるがいい。「仮令海が,主の御言葉を記すための墨であっても,主の御言葉が尽きない中に,海は必ず使い尽くされよう。たとえわたしたちが(他の)それと同じ(海)を補充のために持っても。 

 

     110. 言ってやるがいい。「わたしはあなたがたと同じ,只の人間に過ぎない。あなたがたの神は,唯一の神(アッラー)であることが,わたしに啓示されたのである。凡そ誰でも,主との会見を請い願う者は,正しい行いをしなさい。かれの主を崇る場合に何一つ(同位に)配置して崇拝してはならない。」

 

19 - マルヤム章

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. カーフ・ハー・ヤー・アイン・サード。 

 

     2. (これは)あなたの主が,しもベのザカリーヤーに御慈悲を与えたことの記述である。 

 

     3. かれが密かに請願して,主に祈った時を思え。 

 

     4. かれは言った。「主よ,わたしの骨は本当に弱まり,また頭の髪は灰色に輝きます。だが主よ,わたしはあなたに御祈りして,御恵・を与えられないことはありません。 

 

     5. 只々わたしの後の,近親(と同胞のこと)を恐れます。わたしの妻は不妊です。それであなたの御許から,相続者をわたしに御授け下さい。 

 

     6. わたしを継がせ,またヤアコーブの家を継がせて下さい。主よ,かれを御意に適う者にして下さい。」 

 

     7. (主は仰せられた。)「ザカリーヤーよ,本当にわれはあなたに,ヤヒヤーという名の息子の昔報を伝える。われは未だ且つて誰にもその名は授けなかった。」 

 

     8. かれは申しあげた。「主よ,わたしにどうして息子がありましょう。わたしの妻は不妊です。その上わたしは極めて高齢になりました。」 

 

     9. かれは言った。「そうであろう。(だが)あなたの主は仰せられる。『それはわれにとっては容易なことである。あなたが何もない時に,われが以前あなたを創ったように。』」 

 

     10. かれは申し上げた。「主よ印を御示し下さい。」かれは言った。「あなたの体は,健全でありながら,印として3夜の間人に話せなくなるであろう。」 

 

     11. そこでかれは聖所を出て人びとの所に来て,「朝な夕な(主を)讃えなさい。」と手まねで伝えた。 

 

     12. (そしてかれの息子に。)「ヤヒヤーよ,啓典をしっかりと守れ。」(と命令が下った)。そしてわれは,幼少(の時)かれに英知を授け, 

 

     13. またわが許から慈愛と清純な心を授けた。かれは主を畏れ, 

 

     14. 父母に孝行で高慢でなく,背くこともなかった。 

 

     15. かれの生誕の日,死去の日,復活の日に,かれの上に平安あれ。 

 

     16. またこの啓典の中で,マルヤム(の物語)を述べよ。かの女が家族から離れて東の場に引き籠った時, 

 

     17. かの女はかれらから(身をさえぎる)幕を垂れた。その時われはわが聖霊(ジブリール)を遣わした。かれは1人の立派な人間の姿でかの女の前に現われた。 

 

     18. かの女は言った。「あなた(ジブリール)に対して慈悲深き御方の御加護を祈ります。もしあなたが,主を畏れておられるならば(わたしに近寄らないで下さい)。」 

 

     19. かれは言った。「わたしは,あなたの主から遣わされた使徒に過ぎない。清純な息子をあなたに授ける(知らせの)ために。」 

 

     20. かの女は言った。「未だ且つて,誰もわたしに触れません。またわたしは不貞でもありません。どうしてわたしに息子がありましょう。」 

 

     21. かれ(天使)は言った。「そうであろう。(だが)あなたの主は仰せられる。『それはわれにとっては容易なことである。それでかれ(息子)を入びとへの印となし,またわれからの慈悲とするためである。(これは既に)アッラーの御命令があったことである。』」 

 

     22. こうして,かの女はかれ(息子)を妊娠したので,遠い所に引き籠った。 

 

     23. だが分娩の苦痛のために,ナツメヤシの幹に赴き,かの女は言った。「ああ,こんなことになる前に,わたしは亡きものになり,忘却の中に消えたかった。」 

 

     24. その時(声があって)かの女を下の方から呼んだ。「悲しんではならない。主はあなたの足もとに小川を創られた。 

 

     25. またナツメヤシの幹を,あなたの方に揺り動かせ。新鮮な熟したナツメヤシの実が落ちてこよう。 

 

     26. 食べ且つ飲んで,あなたの目を冷しなさい。そしてもし誰かを見たならば,『わたしは慈悲深き主に,斎戒の約束をしました。それで今日は,誰とも御話いたしません。』と言ってやろがいい。」 

 

     27. それからかの女は,かれ(息子)を抱いて自分の人びとの許に帰って来た。かれらは言った。「マルヤムよ,あなたは,何と大変なことをしてくれたのか。 

 

     28. ハールーンの姉妹よ,あなたの父は悪い人ではなかった。母親も不貞の女ではなかったのだが。」 

 

     29. そこでかの女は,かれ(息子)を指さした。かれらは言った。「どうしてわたしたちは,揺能の中の赤ん坊に話すことが出来ようか。」 

 

     30. (その時)かれ(息子)は言った。「わたしは,本当にアッラーのしもベです。かれは啓典をわたしに与え,またわたしを預言者になされました。 

 

     31. またかれは,わたしが何処にいようとも祝福を与えます。また生命のある限り礼拝を捧げ,喜捨をするよう,わたしに御命じになりました。 

 

     32. またわたしの母に孝養を尽くさせ,高慢な恵まれない者になされませんでした。 

 

     33. またわたしの出生の日,死去の日,復活の日に,わたしの上に平安がありますように。」 

 

     34. そのこと(イーサーがマルヤムの子であること)に就いて,かれら(ユダヤ教徒,キリスト教徒)は疑っているが本当に真実そのものである。 

 

     35. アッラーに子供が出来るなどということはありえない。かれに讃えあれ。かれが一事を決定され,唯「有れ。」と仰せになれば,即ち有るのである。 

 

     36. 本当にアッラーは,わたしの主であり,またあなたがたの主であられる。だからかれに仕えなさい。これこそ正しい道である。 

 

     37. それなのにかれらの間で,諸宗派が異なる。信じない者こそ災いである。偉大なる日の審判のためこ。 

 

     38. かれらがわが前に罷り出る日,何んとはっきりと聞こえまた見えるであろうか。だが不義者たちは,今日(現世で)は明らかに迷誤の中にいる。 

 

     39. あなたは悔恨の日(復活の日)に就いて,かれらに警告しなさい。その時,事は決定されるのである。かれらが油断し,また不信心である間に。 

 

     40. われは,大地とその上にある凡てのものを相続する。またわれに,かれらは帰るのである。 

 

     41. またこの啓典の中で,イブラーヒーム(の物語)を述べよ。本当にかれは正直者であり預言者であった。 

 

     42. かれが父にこう言った時を思え。「父よ,あなたは何故聞きも,見もしないで,また僅かの益をも与えないもの(木石の偶像)を崇拝なさるのか。 

 

     43. 父よ,あなたが授かっていない知識が,今,確かにわたしに下った。だからわたしに従いなさい。わたしはあなたを正しい道に導くでしょう。 

 

     44. 父よ,悪魔に仕えてはなりません。本当に悪魔は慈悲深き御方に対する謀叛者です。 

 

     45. 父よ,本当にわたしは慈悲深き御方からの懲罰が,あなたに下ることを恐れます。それであなたが,悪魔の友になることを心配しています。」 

 

     46. かれ(父)は言った。「イブラーヒームよ,あなたはわたしたちの神々を拒否するのか。もしそれを止めないなら,必ずあなたを石打ちにするであろう。さあ永久にわたしから離れ去れ。」 

 

     47. かれは言った。「あなたに平安あれ。わたしの主に,あなたのため御赦しを祈る。本当にかれは,わたしに対し慈悲深くあられます。 

 

     48. わたしはあなたがたから離れ,またアッラー以外にあなたがたが祈るものから離れて,わたしの主に祈ります。わたしの主に御祈りすれば,恐らく(主の)御恵・のないめにあわないでしょう。」 

 

     49. それでかれ(イブラーヒーム)が,かれらとアッラー以外にかれらが仕えるものから離れ去った時,われはかれにイスハークとヤアコーブを授けた。そしてわれはかれらをそれぞれ預言者にした。 

 

     50. われは,かれらの上に慈悲を垂れ,また崇高な其実を伝える舌を授けた。 

 

     51. またこの啓典の中で,ムーサーのことを述べよ。本当にかれは,誠実であり,使徒であり預言者であった。 

 

     52. われは(シナイ)山の右がわからかれに呼びかけ,密談のためわれの近くに招き寄せた。 

 

     53. またわれの慈悲により,その兄のハールーンを,預言者としてかれに授けた。 

 

     54. またイスマーイールのことを,この啓典の中で述べよ。本当にかれは約束したことに忠実で,使徒であり預言者であった。 

 

     55. かれはいつもその一族に,礼拝と喜捨を命令し,主の愛される一人であった。 

 

     56. またイドリースのことを,この啓典の中で述べよ。かれは正直な人物であり預言者であった。 

 

     57. そしてわれはかれを高い地位に挙げた。 

 

     58. これらの者は,アッラーが恩恵を施された預言者たちで,アーダムの子孫で,われがヌーフと一緒に(方舟で)運んだ者たちの子孫であり,またイブラーヒームとイスラーイール(ヤアコーブ)の子孫の中,われが選んで導いた者たちである。慈悲深き御方の印がかれらに読誦される度に,かれらは伏してサジダし涙を流す。〔サジダ〕 

 

     59. それなのにかれらの後継者が礼拝を怠り,私欲に耽ったので,やがて破滅に当面することになるであろう。 

 

     60. だが梅悟して信仰し,善行に動しむ者は別である。これらの者は楽園に入り,少しも不当な扱いを受けることはないであろう。 

 

     61. アドン(エデン)の楽園,それは信じていても目には見えないものだが,慈悲深い御方がそのしもべたちに約束なされたものである。本当にかれの約束は,いつも完遂される。 

 

     62. かれらはそこでは無用の話を聞かず,只々「平安あれ。」(と言う語を聞く)だけであろう。かれらは朝な夕な,そこで御恵・を与えられる。 

 

     63. これが楽園である。主を畏れたわがしもベに継がせる所である。 

 

     64. (天使たちは言う。)「わたしたちは,主の御命令による外は下らない。わたしたち以前のこと,わたしたち以後のこと,またその間の凡てのことは,かれの統べられるところ。あなたがたの主は決して忘れられない。 

 

     65. (かれは)天と地,またその間にある凡ての有の主であられる。だからかれに仕え,かれへの奉仕のために耐え忍びなさい。あなたはかれと肩を並べ呼ぶものを(外に)知っているのか。」 

 

     66. 人は言う。「一体わたしが死んだ時,やがて甦るのであろうか。」 

 

     67. 人は思わないのか。われは以前何も無いところから,かれ(人間)を創ったのである。 

 

     68. それであなたの主によって,われはかれらそして悪魔たちを必ず召集する。それからわれは,必ずかれらを地獄の周囲に引きたて(かれらを恐れ戦かせ)脆かせよう。 

 

     69. それからわれは,各宗派から慈悲深き御方に背くことの甚しい者を,必ず(側に)抜き出す。 

 

     70. その時誰がそこで焼かれるに相応しいかを熟知するのは,正にわれである。 

 

     71. そしてあなたがたの中一人もそれを通り越せない。これはあなたがたの主が,成し遂げられる御神命である。 

 

     72. しかしわれは主を畏れる敬虔な者を救い,不義を行った者は跪いたままで放って置こう。 

 

     73. わが公明な印がかれらに読誦される時,信じない者たちは信仰する者に向かって,「どちらが地位において高く,またどちらが気前がいいか」などという。 

 

     74. だがわれは如何に物資の豊富な,また見せかけの輝かしい多くの世代を,かれら以前に滅ぼしたことであろうか。 

 

     75. 言ってやるがいい。「迷っている者でも慈悲深い御方はかれらに対し命を延ばされる。だがそれもかれらが警告されたことを見る時,つまり罰せられるか,それとも(審判の)時になるまでである。やがてかれらは,どちらがより酷い立場であり,どちらが弱い勢力であるかを知るであろう。」 

 

     76. アッラーは導きを求める者に対し,御導きを増やされる。そして朽ちすたれない善行は,主の御許では報奨において優れ,また帰り所において優る。 

 

     77. あなたはわが印を拒否した者を見たか。だがかれは,「わたしは富と子孫とに,きっと恵まれるであろう。」と言う。 

 

     78. かれは幽玄界を見とどけたのか。それとも慈悲深い御方の何らかの約束を得たのか。  

 

     79. いや決してそうではない。われはかれの言うことを記録し,かれに対する懲罰を延ばすであろう。 

 

     80. かれらの言っていることは凡てわれが引き取り,かれは只一人でわが許に来るであろう。 

 

     81. かれらはアッラーの外に神々を立て,かれらを仲裁者にしようとしている。 

 

     82. 決してそうではない。かれら(神々)はその崇拝を拒否し,かれらに対し敵になろう。 

 

     83. かれらを唆すために,われが不信心者に対し悪魔たちを遺わしているのをあなたは気が付かないのか。 

 

     84. だからかれらに対し性急であってはならない。われは只々かれらのために(限られた猶予の日)数を数えるだけである。 

 

     85. その日,われは主を畏れる者を(名誉の)使節を迎えるように慈悲深き御方(の御許)に集め, 

 

     86. われは罪深い者を,獣の群を水に追うように,地獄に追いたてる。 

 

     87. 慈悲深き御方から御許しを得た者の外は,誰も執り成す力を持たないであろう。 

 

     88. またかれらは言う。「慈悲深き御方は子を蝕けられる。」 

 

     89. 確かにあなたがたは,酷いことを言うものである。 

 

     90. 天は裂けようとし,地は割れて切々になり,山々は崩れ落ちよう。 

 

     91. それはかれらが,慈悲深き御方に対し,(ありもしない)子の名を(執り成すものとして)唱えたためである。 

 

     92. 子を蝕けられることは,慈悲深き御方にはありえない。 

 

     93. 天と地において,慈悲深き御方のしもべとして,罷り出ない者は唯の1人もないのである。 

 

     94. 本当にかれは,かれらの(すべて)を計算し,かれらの数を数えられる。 

 

     95. また審判の日には,かれらは各々一人でかれの御許に罷り出る。 

 

     96. 信仰して善行に励む者には,慈悲深い御方は,かれらに慈し・を与えるであろう。 

 

97.われが(クルアーン)をあなたの言葉(アラビア語)で下し分りやすくしたのは,あなたが,主を畏れる者に吉報を伝え,議論好きの者に警告するためである。 

    98.われは,かれら以前に如何に多くの世代を滅ぼしたことであろう。あなたは(今),それらの中の一人でも見かけられるのか。またはかれらの囁きを聞くことが出来るのか。

 

20 - ター・ハー章

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

     1. ター・ハー。 

 

     2. われがあなたにクルアーンを下したのは,あなたを悩ますためではない。 

 

     3. 主を畏れる者への,訓戒に外ならない。 

 

     4. 大地と高い諸天とを創りなされる,かれから下された啓示である。 

 

     5. 慈悲深き御方は,玉座に鎮座なされる。 

 

     6. 天にあり地にあるもの,そしてその間にある凡てのもの,また,湿った土の下にあるものは,凡てかれのものである。 

 

     7. 仮令あなたが大声で話しても(関りなく),かれは,秘められたことも隠されていることも知っておられる。 

 

     8. アッラー,かれの外に神はないのである。最も美しい御名はかれに属する。 

 

     9. ムーサーの物語が,あなたに届いたか。 

 

     10. かれが火を見て,家族に言った時のことを思いなさい。「留まれ,わたしは火を見た。多分あそこから,火把を持ち帰ることが出来よう。あるいはあの火で,導かれるかもしれない。」 

 

     11. だがかれがそこに来た時,声があって呼ばれた。「ムーサーよ, 

 

     12. 本当にわれはあなたの主である。だから靴を脱げ。今あなたは,トワーの聖谷にいるのである。 

 

     13. われはあなたを選んだ。だから(あなたに)啓示することを聞け。 

 

     14. 本当にわれはアッラーである。われの外に神はない。だからわれに仕え,われを心に抱いて礼拝の務めを守れ。 

 

     15. 確かに(終末の)時は来るのであるが,それを秘めて置きたいのは,各人が努力したところに応じ,報いを受けさせるためである。 

 

     16. だから,これを信じないで自分の欲望に従う者たちから遠ざかり,あなたを破滅から救え。 

 

     17. あなたの右手にあるそれは何か,ムーサーよ。」 

 

     18. かれは申し上げた。「これは杖です。わたしはこれに(?)れ,また羊のためにこれで(木の葉を)打ち落し,また,その外の用に供します。」 

 

     19. かれは仰せられた。「ムーサーよ,それを投げよ。」 

 

     20. かれがそれを投げたところ,即座にそれは蛇になって,這い回った。 

 

     21. かれは仰せられた。「それを押えよ。恐れてはならない。われはそれを元のように返すであろう。 

 

     22. それからあなたの手を,腋の下に入れよ。何の障りもないのに,それは白くなろう。これは今一つの印。 

 

     23. われが更に大きい印を,あなたに示すためである。 

 

     24. あなたはフィルアウンのもとに行け。本当にかれは高慢非道である。」 

 

     25. かれは(祈って)言った。「主よ,わたしの胸を広げて下さい。 

 

     26. わたしの仕事を容易にして下さい。 

 

     27. わたしの舌の(縫?)れをほぐして, 

 

     28. わたしの言葉を,かれらに分らせて下さい。 

 

     29. またわたしの家族の中から,援助者を御授け下さい。 

 

     30. わたしの兄弟,ハールーンを, 

 

     31. わたしに加勢し, 

 

     32. わたしの仕事に協力するようにさせて下さい。 

 

     33. それはわたしたちが,あなたを多く讃え, 

 

     34. また不断にあなたを念ずるためであります。 

 

     35. 本当にあなたこそ,わたしたちを見守り下される方であります。」 

 

     36. かれは仰せられた。「ムーサーよ,本当にあなたの願いは聞き届けられた。 

 

     37. われは,この前にもあなたに恵・を施した。 

 

     38. その時は,わが意志をあなたの母に伝えた。 

 

     39. 『(その子を)箱の中に入れて,川に投げよ。川がかれを蟹にうち上げ,われの敵であり,またこの子の敵が拾い上げよう。』そしてあなたの上に,われの愛を注ぎかける。それでわれの目(保護)のもとで育てられることになろう。 

 

     40. その時あなたの姉が,罷り出て,『わたしが(その子を)育てる者を,御教えしましょうか。』と言った。こうしてわれは,母の手にあなたを返し,それでかの女も満足し,悲し・も消えた。またあなたは人を殺した。だがわれは苦悩からあなたを救い,いろいろとあなたを試・た。それから数年の間,マドヤンの民の中に滞巧し,それから定められたように,あなたはここに来たのであろ。ムーサーよ。 

 

     41. われはあなたをわれ(に奉仕させる)ために,育てあげた。 

 

     42. あなたと兄弟は,われの印を携えて行け。そしてわれを念ずることを怠ってはならない。 

 

     43. あなたがた両人はフィルアウンの許に行け。本当にかれは高慢非道である。 

 

     44. だがかれにもの静かな説き方で語れ。かれは訓戒を受け入れるか,またはわれを恐れるであろう。」  

 

     45. かれら両人は言った。「主よ,本当にかれが急いでわたしたちに(害を加え)また法外のことをするのを恐れます。」 

 

     46. かれは仰せられた。「恐れることはない。本当にわれは,あなたがたと一緒にいる。聞いており見ているのである。 

 

     47. だからあなたがた両人は行って,かれに言ってやるがいい。『本当にわたしたちは,あなたの主の使徒である。だからわたしたちと一緒にイスラエルの子孫たちを釈放し,かれらを苦しめてはならない。本当にわたしたちは,印を持ってあなたの主から来た者である。御導きに従う者は,平安である。 

 

     48. 本当にわたしたちに,確かに啓示されたのである。拒否する者また背き去る者には懲罰(が待ち構えているだけである)。』」 

 

     49. かれ(フィルアウン)は言った。「ムーサーよ,あなたがたの主は誰であるのか。」 

 

     50. かれは(答えて)言った。「わたしたちの主こそは,万有を創造し,一人一人に(姿や資質その外を)賦与され,更に導きを与える方である。」 

 

     51. かれ(フィルアウン)は言った。「それなら過ぎ去った世代の者はどうなるのか。」 

 

     52. かれは言った。「それに関する知識は,書冊に記されて主の御許にあります。わたしの主は,誤りを犯すこともなく,忘れることもありません。 

 

     53. かれは,大地をあなたがたの臥床とされ,あなたがたのため,そこに道を縦横につけ,また天から雨を降らせられる。それによって,われはそれぞれの異なった雌雄の植物を生長させる。 

 

     54. 食べ,またあなたがたの家畜を放牧しなさい。本当にその中には,理知ある者への種々の印がある。 

 

     55. われは,それ(泥)からあなたがたを創り,それにあなたがたを帰らせ,またそれから今一度引き出すのである。」 

 

     56. われはかれ(フィルアウン)に,凡てのわが印を示したのだが,かれは虚偽であるとして拒否した。 

 

     57. かれは言った。「ムーサーよ,あなたがたは魔術で,この国からわたしたちを追い出すために来たのか。 

 

     58. それなら,わたしたちもそのような魔術をあなたに持ち出そう。さあ,わたしたちとあなたの間で約束して公開の場所を定め,わたしたちもあなたもそれを違えないようにしよう。」 

 

     59. かれ(ムーサー)は言った。「あなたとの会合の約束は,祭の日である。人びとを昼前に御集め下さい。」 

 

     60. そこでフィルアウンは引き取り,やがて計画を練って(返って)来た。 

 

     61. ムーサーはかれらに言った。「あなたがたは災いに会うだろう。かれがあなたがたを処罰して滅ぼされることのないよう,アッラーに対し捏造し,嘘を言ってはならない。(嘘を)捏造する者は必ず失敗する。」 

 

     62. そこでかれらはお栗いに策を練って論じあったが,勿論その相談は秘密にした。 

 

     63. かれらは言った。「確かに両人は魔術師である。かれらはあの魔術であなたがたを国土から追い出し,あなたがたの優れた習わしを根絶しようと望んでいる。 

 

     64. それで各自の計画を練り,それから列をなして集れ。今日勝利を得る者は,必ず栄えるのである。」 

 

     65. かれらは言った。「ムーサーよ,あなたが投げるか,それともわたしたちが先に投げようか。」 

 

     66. かれ(ムーサー)は言った。「いや,あなたがたが先に投げなさい。」すると見るがいい。かれには縄と杖が,魔術で(活きて)走るかのように見えた。 

 

     67. それでムーサーは,少し心に恐れを感じた。 

 

     68. われは言った。「恐れるには及ばない。本当にあなたが上手である。 

 

     69. あなたの右手にあるものを投げなさい。かれらが作ったものを呑・込め。魔術師の誤魔化しに過ぎない。魔術師は何処から来ても,(何事も)成功しない。」 

 

     70. そこで魔術師たちは,伏してサジダし,「わたしたちは,ムーサーとハールーンの主を信仰します。」と言った。 

 

     71. かれ(フィルアウン)は言った。「わたしが許さない中に,かれを信じるのか。本当にかれは,あなたがたに魔術を教えたあなたがたの頭目であろう。あなたがたの両手と両足を栗い違いに切断して,ナツメヤシの幹に貼り付けにするであろう。あなたがたはどちらの懲罰がより厳重で,永続するか必ず分るであろう。」 

 

     72. かれら(魔術師)は言った。「わたしたちは,わたしたちに示された明白な印,またわたしたちを創造なされたかれ以上に,あなたを重んじることは不可能です。それであなたの決定されることを実施して下さい。だがあなたは,現世の生活においてだけ,判決なさるに過ぎません。 

 

     73. 本当にわたしたちが主を信仰するのは,わたしたちの誤ちの御赦しを請い,またあなたが無理じいでした魔術に対して,御赦しを請うためであります。アッラーは至善にして永久に生きられる方であられます。」 

 

     74. 罪人として主の御許に来る者には,本当に地獄がある。その中でかれは死もなく生もない。 

 

     75. だが,多くの善行をして,信者としてかれの許に来た者には高い位階を与える。 

 

     76. かれ(信者)は永遠に川が下を流れるアドン(エデン)の楽園に住むのである。これは,自分を純潔に守った者への報奨である。 

 

     77. われはムーサーに啓示した。「われのしもべたちと共に夜に旅立って,かれら(イスラエルの民)のために,海の中に乾いた道を(あなたの杖で)打ち開け。(フィルアウンの軍勢に)追い付かれることを心配するな。また(海を)柿がることはない。」 

 

     78. 果してフィルアウンは,軍勢を率いてかれら(イスラエルの民)を追ったが,海水がかれらを完全に水中に沈め覆ってしまった。 

 

     79. (このように)フィルアウンはその民を迷わせ,正しく導かなかったのである。 

 

     80. イスラエルの子孫よ,われはあなたがたを敵から救い,また(シナイ)山の右側であなたがたと約束を結び,マンナとウズラをあなたがたに下した。 

 

     81. (そしてわれは言った。)「われがあなたがたに授けた善いものを食べなさい。さりとてわれの怒りがあなたがたに下らないよう,法を越えてはならない。誰でもわれの怒りに触れる者は,必ず滅びる。 

 

     82. だが梅悟して信仰し,善行に動し・,その後(正しく)導かれる者には,われは度々寛容を示す。」 

 

     83. 「ムーサーよ,何故あなたは,自分の民より離れ,先んじて急ぐのか。」 

 

     84. かれは申し上げた。「かれらは,わたしの足跡を追って参ります。主よ,わたしはあなたが御喜びになるよう急いだのです。」 

 

     85. かれは仰せられた。「本当にわれはあなたの去った後あなたの民を試・たが,サーミリーがかれらを迷わせた。」 

 

     86. そこでムーサーは,怒り悲しんで民の許に帰り,言った。「わたしの人びとよ,あなたがたの主は,善い約束をあなたがたに結ばれなかったのですか。あなたがたには余りに長い約束のように思われたのですか。それとも主からの御怒りがあなたがたに下ることを望んだのですか。だからわたしとの約束を違えたのですか。」 

 

     87. かれらは言った。「わたしたちは自分に確かな根拠があって,あなたとの約束を破ったのではないのです。わたしたちはエジプト人の,装飾品の重荷を負わされたので,それを(火の中に)投げ入れたのです。サーミリーも投げ込んだようにです。」 

 

     88. そこでかれ(サーミリー)は,かれら(イスラエルの民)のために,吼える仔牛の偶像を造った。そして言った。「これはあなたがたの神で,またムーサーの神です,かれは忘れたのです。」 

 

     89. それは,一言もかれらに答えず,またかれらに害もなく益もないことが分らないのであろうか。 

 

     90. ハールーンは(この事の)前に,充分にかれらに言った。「人びとよ。あなたがたはこれによって試・られるのです。主は,本当に慈悲深い方です。だからわたしに従い,わたしの命令に服従しなさい。」 

 

     91. かれらは言った。「わたしたちは,ムーサーが帰って来るまで,(仔牛)を拝・続けるでしょう。」 

 

     92. かれ(ムーサー)は言った。「ハールーンよ,かれらが迷うのを見た時,何があなた(の義務の履行)を妨げたのですか。 

 

     93. わたしに従わないのですか。わたしの命令に背くのですか。」 

 

     94. かれ(ハールーン)は言った。「わたしの母の子よ,わたしの髭や頭(の髪)を(楓?)むのを止めてください。本当にわたしはあなたが,『イスラエルの子孫の間を分裂させました。また自分の言葉を守りませんでした。』と言うのを恐れたのです。」 

 

     95. かれ(ムーサー)は言った。「ではサーミリーよ,あなたの(行ったことの)目的は何ですか。」 

 

     96. かれは言った。「わたしは,かれらの見なかったものを見たのです。それで使徒の足跡から一握りの(土)を取って,それを(仔牛の像)に投げつけたのです。わたしの心が,そうわたしに示唆したのです。」 

 

     97. かれ(ムーサー)は言った。「出ていきなさい。生きている限りは,誰とも接触がなくなる。決して破れない約束(処罰)があなたにはある。あなたがのめり込んで崇拝していた神々を見なさい。わたしたちはこんなものは焼いて海の中にまき散らすでしょう。 

 

     98. (人びとよ)本当にあなたがたの神はアッラーだけです。かれの外に神はないのです。かれは,凡てのものをその御知識に包容なされます。」 

 

     99. このようにわれは,以前に起った消息をあなたに語り,わが許からあなたに訓戒を下した。 

 

     100. 誰でもそれに背く者は,復活の日に必ず重荷を負うであろう。 

 

     101. かれらはいつまでもこの状態のままである。復活の日の重荷こそ,かれらにとり災いである。 

 

     102. ラッパが吹かれる日,この日われは曇った目の罪深い者を招集する。 

 

     103. かれらは囁きあって,「あなたがたは10(日)も滞巧しなかったであろう。」と言う。 

 

     104. われはかれらの言おうとすることをよく知っている。その時最も世故にたけた者が,「わたしたちの滞巧は1日にもならない。」と言うであろう。 

 

     105. かれらは山に就いて,あなたに問うであろう。そこで言ってやるがいい。「わたしの主は,それを粉々にして捲き散らされる。 

 

     106. かれは,それを平らな平地になされ, 

 

     107. そこには,曲りも凹凸も見ないでしょう。」 

 

     108. その日かれらは呼び手に従い逸れるわけにはいかない。慈悲深い御方の御前では,声は低くなり,忍び足の音の外は聞かないであろう。 

 

     109. その日,慈悲深い御方に御許しを得ている者以外の執り成しは無益であろう。その者の言葉は,かれに受け入れられる。 

 

     110. かれは,かれらの前にあること,後ろにあることを知っておられる。だがかれら(人間)の知識では,それを計り知ることは出来ない。 

 

     111. かれらの顔は,永生し自存する御方の御前でうつむいているであろう。そして罪業を負うものに,浮ぶ瀬はない。 

 

     112. だが善行に動し・,信仰した者は,何の心配もなく,(主からの報奨を)減らされることもないのである。 

 

     113. このように,われはこの啓示をアラビア語のクルアンとして下し,その中でいろいろと警告を伝えた。多分かれらは主を畏れ,または教訓を会得しよう。 

 

     114. アッラーは,いと高くおられる真の王者である。あなた(預言者ムハンマド)に対する啓示が完了しない前に,クルアーンを急いではならない。寧ろ(祈って)言いなさい。「主よ,わたしの知識を深めて下さい。」 

 

     115. われは,以前にアーダムに確と約束した。だがかれは(その履行を)忘れた。われは,かれがそれに堅固であるとは認めない。 

 

     116. われが天使たちに対し,「アーダムにサジダしなさい。」と言った時を思いなさい。イブリースの外かれらはサジダした。だがかれは拒否した。 

 

     117. それでわれは言った。「アーダムよ,本当にこの者は,あなたとあなたの妻の敵である。それであなたがた両人はこの楽園から追い出されて,不幸に陥いらないよう気を付けなさい。 

 

     118. ここでは,あなたがたのために(十分の御恵・があって)飢えもなく,裸になることもない。 

 

     119. また渇きを覚えることもなく,太陽の暑さにも晒されない。」 

 

     120. しかし悪魔はかれに囁いて言った。「アーダムよ。わたしはあなたに永生の木と,衰えることのない王権を教えてあげましょう。」 

 

     121. 両人がそれを食べると,恥かしいところがあらわになった。それでかれらはその園の木の葉でそこを覆い始めた。こうしてアーダムは主に背き,誤ちを犯した。 

 

     122. その後,主はかれを選び,悔悟を赦され御導きになられた。 

 

     123. かれは仰せられた。「あなたがた両人は一緒にここから下がれ。あなたたちは栗いに敵である。もしあなたがたにわれから導きが下れば,誰でもわが導きに従う者は迷うことなく,また不幸に陥らないであろう。 

 

     124. だが誰でも,わが訓戒に背を向ける者は,生活が窮屈になり,また審判の日には盲目で甦らされるであろう。」 

 

     125. かれは言う。「主よ,わたしは(以前)聴限者であったのに,何故わたしを盲目として甦らせたのですか。」 

 

     126. かれは仰せられる。「われの印があなたに下った時,あなたはそれを無視したではないか。今日あなたはそれと同様無視されるのである。」 

 

     127. われはこのようにして,背いた者と主の印を信じなかった者に報いる。だが来世における懲罰は,更に厳しくまた永続する。 

 

     128. かれらには御導きはなかったのか。かれらより以前にもわれはどんなに多くの世代を滅ぼしたことか。かれら(古人)の住んでいた所を(今)かれらは歩いている。本当にこの中には理知に富む者への印がある。 

 

     129. もし,主から御言葉が下されていなかったならば,(懲罰は)避けられないのである。だが,定められた(猶予の)期限がある。 

 

     130. だからかれらの言うことを忍び,太陽が上がる前,またそれが沈む前に,あなたの主の栄光を讃えなさい。なお夜の一時も,また昼の両端にも讃えなさい。必ずあなたがたは満たされるであろう。 

 

     131. またわれが,かれらのある部類の者に与えたこの世の生活の栄華に,あなたの目を見張ってはならない。われは,それによってかれらを試・た。あなたの主の賜物こそ至上でまた永続する。 

 

     132. またあなたの家族に礼拝を命じ,そして(あなたも),それを耐えなさい。われはあなたに御恵・を求めない。あなたがたに恵・を与えるのはわれである。善果は主を畏れる者の上にある。 

 

133.またかれらは,「何故かれは,わたしたちに主から一つの印をも(湾?)さないのですか。」と言う。以前の諸啓典にある明証が,かれらに下っているではないか。 

 

134.われがもしこれ以前にかれらを処罰して,滅ぼしていたならば,かれらは必ず,「主よ,何故あなたは,わたしたちに使徒を遣わされなかったのですか。そうすればわたしたちは,卑しまれ屈辱を被る前に,あなたの印に従ったでしょうに。」と言ったであろう。 

      135.言ってやるがいい。「各人は待っている。だからあなたがたも待て。あなたがたはやがて,平坦な道を歩む者は誰か,また導かれた者は誰かを知るであろう。」